ごく普通の女性たちが、ふとしたことから犯罪にかかわってしまうという、小さな町で起きた身近な事件たち。5つの作品からなる短編集。
あらすじ
・石蕗南地区の放火
災害共済地方支部に勤める笙子は、不審火のあった神社へ現場調査に向かう。そこには顔を合わせたくない消防団員・大林がいたが、笙子は気がつかないふりをした。あまりイケてない大林と1度でもデートしたという事実を、笙子は誰にも知られたくなかった・・。
他4編収録。
感想
鍵のない夢を見たとしたら、ああ本当じゃなくて良かったと思うのだろう。この作品を読み終えたあとも、「ああ自分じゃなくて良かった」という思いが起きる。どの話も遠いところではないと感じた。
石蕗南地区の放火・・これは放火ということを除いて、他の4編に比べて一番身近なテーマだと思った。好きでも何でもない男から好かれていると思い、ずっと避けているが、結末はちょっとほろ苦い。些細でありがちなことだが、地味にチクチクする。
仁志野町の泥棒・・大袈裟な題だが、ちょっとした泥棒行為をする人は実はどこにでもいる。本人よりもまわりのほうがずっと長い間傷ついている。
美弥谷団地の逃亡者・・はじめは何も考えずに読んでいたが、とちゅうで不穏なことに気付く。気付いてからは怖くなる。
芹葉大学の夢と殺人・・ミステリ好きにはこの作品がいちばんおもしろかった。ただ、登場人物たちの心情に共感するかと言えば、まったくしないというのもこの作品の特徴だった。
君本家の誘拐・・もっとも自分の体験に近いと言えば近いのがこの作品。子育てがいかに大変かということを思い出した。ただ、こういう人は普通はいない。
直木賞受賞作にふさわしく、何かが残る作品集。特に「石蕗南地区の放火」は女性でなければわからないような密かな痛みを持つ。
5つも読める、という意味で読むことをお勧めしたい本。5倍たのしめる。










